活力ある組織づくりをサポートする IKI create 【イキクリエイト】

ホーム > コラム > 第1回:「リーダーシップ」と「マネジメント」

第1回:「リーダーシップ」と「マネジメント」

 IKI CREATEのホームページの立ち上げは、私にとって、改めて自分が「したい事」「出来ること」「すべき事」の整理をし、提供できるコンテンツを考える機会となった。

 その過程でぶち当たった問題の一つが、組織を「イキイキ」に導く人材育成プログラムとして私が提供したいのは、リーダーシップ研修なのか、それともマネジメント研修なのか…という点である。組織においては「管理職研修」という名称で一括りにされていることも多いが、考えだすとなかなか奥が深い。

 一般的にマネジメントは「与えられたビジョン、課題に対してメンバーを管理しながら、効率的・効果的に実行すること」と規定される。一方リーダーシップは「新規創造や変革のために、ビジョン・課題を構築しメンバーを巻き込み実行すること」と規定される。つまりルールや今までの経験をベースに、組織の資源を有効活用し確実に組織目標を達成に導くのがマネジメントであるのに対し、時にはゴールイメージ自体を見直し、既存のやり方に固執しないイノベーション型の取り組みの旗振りをするのがリーダーシップと云えるであろう。

 時代の変化が激しくそれに対するスピード対応が求められている昨今、いや変化対応以上に「変化を創出する」事を求められている中、上記のようなリーダーシップの発揮が求められるのは必然と云える。一方で、成長が見えない時代背景の中では、ますます仕組みが精緻化する中で、限られたヒト・モノ・カネの資源の効率的な活用が強く求められている。ましてや社会全般というステークホルダーの目が厳しなっている昨今、コンプライアンスへの取り組みは益々強化せざるを得ない。これらは間違いなく管理、つまりマネジメントに類する。

 私自身のキャリアを振り返ると、学生時代のバレー部キャプテン、百貨店の教育の課長、労働組合の中央三役そして委員長、上場会社の執行役員など、組織の中心的な役割を担った経験は豊富なほうだろうが、それぞれのポジションで、マネジメント的な役割発揮をしていたか、リーダーシップ的な役割発揮をしていたかは、比較的明確に整理ができる。

 直近の選挙では民主党の圧勝であったが、政治家に対しては「リーダー」「リーダーシップ」という言葉は使うが「マネージャー」「マネジメント」という言葉はあまり使わない。また、労働組合の役員も同様で「リーダー」「リーダーシップ」という言葉は使うが「マネージャー」「マネジメント」という言葉は使わない。もっとも、大きな組織になると、書記長の内部の業務に対して「組織マネジメント」という言葉を使うことはあるが。

 実業においては殆どの組織管理者が「マネジメント」と「リーダーシップ」の両局面を求められる。しかし今、政治でも企業でも、そして組合でも問題として取り上げられるのは「リーダーシップの欠落」が多い。私も企業や組合の研修の依頼をされる際、育成担当者から「決められたことしかやらない」「変革への意識がない」という自社社員の意識を変える研修をして欲しいと言われることが少なくない。

 そもそもマネージャーとリーダーの行動の起点はなんだろうか?

 私は管理者研修でよく「あなたは成功したいですか?それとも失敗したくないんですか?」と尋ねることがある。やや乱暴な問いかけかも知れないが、聞かれた参加者は一様にハッとする。組織において両局面が求められたとしても、必ずしもマネジメントに長けた人がリーダーシップに長けているとは限らない。また、長らくマネジメントのみで良しとされてきた人が急にリーダーシップを求められたとしても、そのとり方がわからない。加えて、「成功したい」という発想にならないことが多いのが実情である。

 世にリーダーシップ研修は数多いが、あくまでも、短日の研修は「気づき」や「動機付け」の一部に過ぎない。まずは、日ごろの会話や、何が褒められ、何をすると叱られるかといった組織風土の点検をした上で、現場において小さなリーダーとしての経験実感を育む時間と場を与える姿勢が何よりも大切だと考える。効率化を追求することの多い昨今の企業において、メンバーの日々の行動や発言が「リーダー的」に変容していくためには、経営や上司の「我慢」という覚悟も必要である。また、目には見えにくいが重要である「リーダー的な行動・発言が組織にもたらす正のエネルギー」を、どう活用するかを意識すべきだろう。

2009年9月15日 平塚 大輔
このページの上へ